「チキンボーン」翡翠牌

中国、明代(15〜16世紀)

寸法:8cm × 6cm 

この翡翠製の牌は、明代中国において制作されたものです。表面には精緻な彫刻が施され、龍の意匠が随所に見られます。「チキンボーン翡翠(鶏骨玉)」と呼ばれるこの素材は、象牙やサイの角、竹などと並んで古くから中国の職人たちに親しまれてきました。翡翠を白濁させる石灰化によって、まるで鶏の骨や象牙のような質感を持たせたものです。 彫刻に見られる龍は、中国文化において非常に重要な存在であり、幸運、守護、知恵、男性性を象徴します。通常は細長い蛇のような体に4本の脚を持つ姿で描かれ、本作の中でもその特徴が確認できます。特に明代においては、龍は皇帝の権威や力の象徴としても用いられました。

ボナムズ(Bonhams)、ロンドン

中国の龍とヨーロッパのドラゴン

ヨーロッパの伝承において、ドラゴンは火を吹く恐ろしい怪物であり、強大で攻撃的な存在として描かれます。 

一方で中国の龍はまったく異なるイメージを持ち、長い歴史の中で幸運や力、調和の象徴とされてきました。神話においても龍は好意的な存在として登場し、多くの吉兆と関連づけられています。たとえば、漢の始祖・劉邦の母が、彼の懐妊前に龍の夢を見たという伝説があります。 また、龍の意匠は身分制度とも深く関わり、元代には二本角・五本爪の龍は皇帝のみ、四本爪の龍は王族や貴族だけが使用を許されていました。明・清代には皇帝の衣服に龍の文様を用いることが一般的となり、龍は皇帝の象徴として定着しました。龍はまた、水を司る神霊的存在とされ、嵐、海、滝などを支配する力を持つと信じられてきました。