マトゥラー産 赤砂岩製 頭部像

インド、クシャーン朝(2〜3世紀)

寸法:高さ19cm

この頭部像は、インドの宗教・芸術の中心地であるマトゥラーにて、クシャーン朝時代(2〜3世紀)に制作されたものです。素材には、マトゥラー特有の赤みを帯びた砂岩が用いられており、白い斑点を含むその石材は、地域の代表的な彫刻素材として知られています。 像の表面は粗めで、砂岩特有のざらつきがはっきりと見て取れます。頭部の一部は欠損していますが、写実的な左目、広く力強い鼻、ふくよかな唇など、当時のマトゥラー様式の特徴がよく残っています。また、厚く長い耳たぶは、仏陀の身体的特徴のひとつであり、超越性と悟りの証とされています。

マトゥラーとその芸術的遺産 :

マトゥラーは、インド北部に位置する最も古い宗教都市の一つであり、紀元前12世紀にはすでに人々が居住していたとされています。ヒンドゥー教ではクリシュナ神の生誕地とされ、7つの聖地「サプタ・プリー」の一つとして信仰されています。 クシャーン朝の時代には、仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教が共存し、文化と芸術が大きく花開きました。特に「マトゥラー美術」として知られる独自の様式が確立され、神像に複数の腕や顔、脚などを持たせる表現がこの地域で初めて登場しました。赤砂岩を用いた彫刻はこの時代の代表的な技法であり、マトゥラーの宗教的かつ芸術的影響力の象徴でもあります。