褐白層ガラス製嗅ぎ煙草入れ(八駿馬文)

中国、19世紀前半

寸法:7cm

この嗅ぎ煙草入れ(スナッフボトル)は、19世紀前半の中国で制作されたもので、褐色と白色の層ガラス技法によって作られています。瓶の本体は吹きガラスによって成形された後、職人が外層の褐色部分を彫り抜いて白層を露出させ、文様を浮き彫りにする「套彫」技法が用いられています。 瓶全体には、8頭の馬 がさまざまな姿勢で表現されており、立つ・走る・遊ぶ・寝そべるなど、動きのある構図が躍動感を生んでいます。馬は中国神話や皇帝文化において、力・統治力・成功・神通力 の象徴とされる重要なモチーフです。瓶の首の下には作者の銘が刻まれており、製作者の誇りと工芸的完成度の高さがうかがえます。蓋は滑らかな赤褐色の硬石製で、シンプルながら品のある仕上がりです。

王母と八駿馬の伝説 :

中国の伝説に登場する「王母(Wang Mu)」は、周王朝の賢王とされ、不老不死の楽園を求めて旅に出た という逸話が伝えられています。その旅を支えたのが、8頭の神馬――「八駿馬(はちしゅんめ)」です。これらの馬は瞬時に千里を駆ける 能力を持ち、王の統治力や権威、そして神聖な使命の象徴とされました。以後、「八駿馬」は帝王の理想像や昇進・成功の願いと結びつき、美術や工芸品に多く登場する縁起の良い図像となっています。