カシャーン産 青釉陶製水差し

イラン、カシャーン、12世紀

寸法:高さ19.5cm

この陶製水差しは、12世紀イランの陶芸の中心地カシャーンで制作されたものです。本体のほぼ全体にわたって、鮮やかな青釉が施されており、底部のみが未施釉となっています。胴部の側面には、シンプルな濃色の縞模様が描かれ、細く絞られた首部がすっきりとした印象を与えます。 カシャーンの陶工たちは、中国とペルシャの釉薬技法を融合させ、独自の技術を発展させました。青釉には、石英の粉末、硼砂樹脂、コバルト酸化物、さらには硫酸ナトリウムなどが焼成時に用いられ、美しい瑠璃色が生み出されました。この水差しは、青釉文化の後期に属すると考えられます。もともと青釉の陶器や建築素材は、寺院や廟、宮殿などの限られた場所でしか使用が許されていませんでしたが、この制限が緩和されると、青釉の器物やタイルの生産が急速に拡大しました。

青釉が命を救う?

古代の支配者たちは、食事に使用する器として青釉陶器を好んで用いたと言われています。その理由の一つに、毒が盛られた食物や飲料が青釉の表面で化学反応を起こして変色するため、毒を見抜く手段として青釉が重宝されたという説があります。 

 

カシャーンについて 

カシャーンは、イラン中部に位置する歴史的な都市で、陶芸やタイル制作、織物で古くから名高い文化都市です。一部の伝承によれば、新約聖書に登場する「東方の三博士」はこのカシャーンの出身で、ベツレヘムの星を追ってイエス・キリストを訪ねたとされています。