漆塗り厨子

日本、江戸時代(17世紀)

寸法:高さ 23.5cm 

この漆塗りの厨子は、江戸時代17世紀に制作された携帯型仏壇で、慈悲の菩薩として広く信仰される観音菩薩を安置するためのものです。厨子の外側は漆で仕上げられ、二枚扉の内側には金色の蓮華文が華やかに描かれています。 観音像は、複数段にわたって高く設けられた精緻な二重蓮華座の上に立ち、右手には宝珠(ほうじゅ)を持ち、その上にはルビーが嵌め込まれています。左手は空ですが、何かを持っているかのような印相を取っています。背後には蔓草文様が施された葉型の光背が立ち、頭部には高い宝冠を戴き、額には白毫が見られます。 衣装は幾何学模様や草花文で密に装飾されており、長く重ねられたスカートと、上半身を半ば覆う布をまとっています。また、首や腕には宝飾品が施され、信仰の対象としての荘厳さが際立っています。

日本の家庭と仏教の広まり

仏教の普及とともに、日本の家庭空間も大きく変化しました。もともと神道の「神棚」のみだった室内には、仏教用の「仏壇」が並ぶようになり、神仏両方を祀る二重信仰の様相が形成されました。神棚は本殿を模した素朴な木製が主流であったのに対し、仏壇は漆塗りの扉付きの箱型構造で、内部には金箔装飾や仏像を安置する空間がありました。

 

厨子と仏壇の違い

「厨子」は、仏像や聖遺物を納めるための携帯型の仏具であり、小型かつ持ち運び可能であったため、旅の僧侶や個人の信者が携帯することもありました。これに対し「仏壇」は家庭内に据え置く大型の礼拝具を指します。どちらも、日常の中で仏を身近に感じるための重要な宗教的対象物でした。